リスク管理への取り組み

1.基本方針

 金融の自由化・国際化等の進展により、金融機関業務はますます多様化・複雑化しております。それに伴い信用リスク、市場リスク、流動性リスク、オペレーショナル・リスク(事務リスク・システムリスク)など信用組合の抱えるリスクも増大し、信用組合の経営に影響を与えております。そのため、各種リスクを把握・分析・管理し、健全経営を維持していくことは信用組合の経営上、不可欠なものとなっております。

 当組合は、リスク管理を最重要課題の1つとして認識し、「健全性の維持」と「適正な収益確保」の双方にバランスの取れた経営をめざしております。

リスク管理体制図

2.リスク管理態勢

 当組合は経営の基本方針に基づき、自己資本管理規程を制定し、健全経営に必要な自己資本を確保するとともに、経営戦略、業務の規模およびリスク特性等に応じて信用リスク、市場リスク、オペレーショナル・リスク等の各リスク管理態勢の整備を進めるために、統合的リスク管理規程を制定しております。その中で、自己資本比率の算定に含まれないリスクも含め、各部門が内包する各種リスクを総体的に把握したうえで、統合的なリスクの評価、評価されたリスクのモニタリング、コントロールおよび削減等に取り組み、リスクに見合った質・量ともに十分な自己資本を維持していくための、自己管理型のリスク管理態勢の確立をめざしております。

信用リスク

定義 取引先の経営悪化等により、貸出した資金の元本または利息の回収が不能となるリスクです。
方針・管理方法
  1. 与信に伴い発生する信用リスクを適切に管理するために信用リスク管理規程を制定し、与信の「事前審査」、「中間管理」、「債権保全」、「事後管理」を充実させることで資産管理の強化をはかることを基本方針としております。
  2. 与信業務について審査部門と推進部門を明確に分離させており、相互牽制が機能する態勢となっております。また個別の与信審査は営業店長権限以内の案件は各支店で審査を行い、営業店長権限を超える案件については審査部で審査を行っております。さらに総与信額が5千万円を超える取引先および要管理先等については、個別に明確な取り組み方針を定めて業況把握等に努めているほか、必要に応じて財務内容の健全化等に向けた支援を行っております。
  3. 信用リスクの評価については、厳格な資産の自己査定と査定結果に基づいた適正な評価に努めております。
  4. 貸出金関係の自己査定では、当組合が保有するすべての貸出資産を個別に判定し、回収の危険性や価値が毀損する可能性の度合いに応じて貸出先等を区分(債務者区分・分類区分)し、適正な貸倒償却・引当を実施しております。
  5. 自己査定は「資産の自己査定基準」に基づき、異なる部署で1次査定、2次査定を実施し、また貸倒償却・引当については「資産の償却・引当基準」に則り算定部署が算定しております。さらに、自己査定のプロセスや算定結果については監査部による監査のほかに外部監査法人による監査を行っており、算定結果の適正性の検証にも努めております。
  6. 信用リスク管理状況についてはリスク管理委員会、常勤理事会および理事会に定期的に報告されており、経営陣が常に状況を把握しております。
信用リスク削減手法に関する方針および手続き
  1. リスク管理の観点から、信用リスクを軽減するために、取引先の状況によって不動産等の担保や信用保証協会保証による保全措置を講じる場合がありますが、これはあくまでも補完的措置であり、資金使途、回収財源、財務内容、取引先の定性情報等さまざまな角度から与信に関する判断を行っております。その結果、担保または保証が必要と判断した場合は、お客さまに対して十分な説明と理解をいただいたうえでご契約いただくなど、適切な取り扱いに努めております。
  2. 信用リスク削減手法として当組合が扱う主要な担保には預金・定期積金があり、担保に関する手続きについては組合が定める「預金担保貸出事務取扱いの運用について」に基づき、適切な事務取り扱いならびに適正な評価・管理を行っております。また、お客さまが期限の利益を失われた場合にはすべての与信取引の範囲において預金相殺等を行う場合がありますが、組合が定める「預金担保貸出事務取扱いの運用について」および「預金・定期積金担保差入証」の条項に基づいた適切な取り扱いを行っております。
  3. なお、信用リスク削減手法の適用に伴う信用リスクの集中に関しては、特に業種やエクスポージャーの種類に偏ることなく分散されております。

市場リスク

定義 価格変動リスクや為替リスク、有価証券の信用リスクなどさまざまな市場の変動により、保有する資産の価値が変動し損失を被るリスクです。
方針・管理方法
  1. 債券や上場株式、投資信託に係るリスクについては、時価評価およびVaRによる予想最大損失額の計測によってリスクを把握し、当組合の抱える市場リスクの状況や、設定されたポジション枠およびリスク限度額の遵守状況を経営陣に報告するとともに、ストレステストなど複合的なリスクの分析結果も定期的にリスク管理委員会へ報告しております。
  2. 株式関連商品への投資は、基本的には債券投資に係るリスクのヘッジ資産と位置づけており、ポートフォリオ全体のリスク・バランスに配慮した運用を心掛けております。なお、取引の執行にあたっては当組合が定める「市場リスク管理規程」、「市場リスク限度額等に関する基準」や「有価証券運用マニュアル」等に基づいた厳格な運用・管理を行っております。
  3. 非上場株式、子会社・関連会社株式に関しては、財務諸表等を基にした評価による定期的なモニタリングを実施するとともに、その状況については、適宜、経営陣へ報告を行うなど、適切なリスク管理に努めております。
  4. なお、当該取引に係る会計処理については、日本公認会計士協会の「金融商品会計に関する実務指針」に従った、適正な処理を行っております。

流動性リスク

定義 財務内容の悪化等により必要な資金が確保できなくなり、資金繰りがつかなくなる場合や、資金の確保に通常よりも著しく高い金利での資金調達を余儀なくされることにより損失を被るリスク(資金繰りリスク)と、市場の混乱等により市場において取引ができなかったり、通常よりも著しく不利な価格での取引を余儀なくされることにより損失を被るリスク(市場流動性リスク)です。
方針・管理方法
  1. 資金繰りの状況・見通しおよび資金繰りに影響を及ぼす諸条件の変化を把握・管理することにより、経営基盤の安定性の向上をはかるとともに、平常時においても流動性リスクが顕在化したことを想定しての対応策を確立します。リスク管理方法については以下のとおりです。
    1. ①資金繰り表による流動性資金量の把握
    2. ②有価証券のうち処分可能額の把握
    3. ③預け金の種別構成、満期構成の把握と適正な流動性枠の管理
    4. ④系統を含む他金融機関からの借入れ可能額の把握
    5. ⑤資金調達構成の定期的把握
    6. ⑥預貸金の計画対実績管理
    7. ⑦債券の信用格付の定期的把握
    8. ⑧有価証券購入時の流動性(出来高、発行額、優先順位、仕組みの有無、担保の有無、公募・私募等)の把握

オペレーショナル・リスク

事務リスク

定義 役職員が正確な事務を怠る、あるいは事故、不正等により損失を被るリスクです。
方針・管理方法
  1. 事務リスク管理の重要性に鑑み、事務処理における正確性の確保を重視し、手順・手続き・権限行使の厳正化、機械化・システム化による手作業事務処理の削減、現金・現物の管理態勢の強化、内部監査などによる牽制機能の確保、事務指導の充実などを通じて、事務リスクを軽減すべく対応をはかるとともに、お客さまからの信頼性の向上に努めております。
  2. 「 事務リスク管理規程」に基づき、事務管理に関する規程類を整備し、厳正・正確な事務処理が行えるよう万全の体制を整えております。
  3. 組合で定めた「リスク管理指標」により、端末操作のミスや異例処理等の発生状況を月次および時系列で捉え、リスクの所在を把握するとともに、その削減に努めております。
  4. 監査部による定期的な監査の実施や営業店自ら実施する自店検査、および事務部による営業店指導などを通じて、内部牽制をはかりながら事務事故の防止や事務水準の向上に努めております。

システムリスク

定義 コンピュータシステムの停止・誤作動、不正利用などにより、業務の遂行や顧客サービスの提供等に支障をきたしたり、その結果として損失を被るリスクです。
方針・管理方法
  1. システムリスク管理の重要性を認識し、システムの安全稼動に万全を期して、コンピュータシステム障害などの発生を未然に防止するとともに、万一発生した場合の影響を極小化し早期の回復をはかるために、SKCセンターバックアップシステムの利用、通信回線の二重化や障害訓練の実施など、必要な対策を講じております。
  2. 「システムリスク管理規程」及び「オペレーショナルリスク管理規程」に基づき、管理体制、トラブル発生時の対応等を明確にし、安定した業務運営ができるよう、リスク管理態勢の強化に努めております。
  3. オンラインシステムの運用・管理は、信組情報サービス株式会社が運営する「SKCセンター」が行っております。同センターは現行システムがある千葉センターとは別に広島県にバックアップセンターを設置しており、万一の障害や災害が発生した場合には、損失を極小化できるよう安全対策を強化しております。さらに万一の事故発生に備え、コンティンジェンシープランを策定するなど被害の極小化に努めております。
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